大学が検査停電

昨日、今日と、S先生と学生が手分けをしてフリーザーや飼育水槽用のケアをしてくれている。ドライアイスを詰めたり、発発とケーブルを準備したり。
農学部サーバー(DNSSMTP&POP)も昨夜からシャットダウンしているので、今日は自宅で仕事。(来週用にスライド作り。明日発送用の原稿完成。火・水の講義準備)

H1N1Fluについて、一昨日Iさんから「大阪の街で中高生の姿を見かけないのが異様だった」と聞いたが、福岡での感覚とは大きく異なり、やはり関西はピリピリしていたのだろう。こちらのblogエントリーからもその異様な雰囲気が感じられる。

総理大臣自らがだみ声で「冷静に」なんてTV CMに出だして、雰囲気は末期的である。じゃあどうすれば良かったのか、良いのか。しばらくの間、見かけ上ダンマリ状態だった専門家への意見もある。感染症研究者の仕事ぶり?への失望感(こちら)にも同感である。一方で、まともな専門家がリアルタイムに情報と意見を発信するリスクは大きかったと思う。散々に煽ってきた(まともでない)専門家発言の奔流のなか、そもそも冷静でまともなことを言ってもそれを伝達する仕組みがなく、無視されるか歪曲されて自らが痛手を負う可能性が高い。かなりの覚悟が必要だったろう。

今日、未だにこんなアホな表現の記事が大手新聞サイトのFlu特集ページにある。

さらに呆れるのは、その記事の下にある「おすすめリンク」である(徐々に変化しているようだが)。変な記事で煽っておいて、さらに情報を、と思ってたとえば
・予防の基本:マスク
をクリックすると楽天ショッピングのページである(もちろん全てのマスクは今品切れ状態)。これって、ページデザインにおける倫理観の欠除だと思う。

昨今の騒ぎを自虐的な意味を含めて「あいかわらずの日本人的」と表現すれば済んでいるようだ。根っこはたとえば「ゼロリスク探求症候群」あたりと同じに見える。まさしくこんな状態

今朝の毎日新聞1面にもがっかり。

簡易検査陰性でも注意

……について、国立感染症研究所が分析結果をまとめた。
(中略)
感染研は「簡易検査で陰性でも新型インフル感染を否定することはできない」としている。
(中略)
感染研は「症例が少ないため、さらに多くの患者の検討が必要」としている。

  • で、結局誰が何を注意する必要があるのか?この記事が想定する読者にとっては、不安を煽られるばかりでなんら有用な情報ではない。
  • さらに、まだ確定とは言えない段階なのに、なぜこの中途半端な情報をプレスリリースするのか?意味のない狼煙を上げないで欲しい。市中の医師に周知が必要ならそこにきちんと届くルートで伝えるべき。

今、一面に上げるべき情報は↓
新型インフル:「確定前の公表やめて」ネット中傷恐れ要望

◇マスク着用は必要な人だけに−−国立がんセンター中央病院・院内感染対策チームの責任者、森慎一郎医長の話
マスクは一般の薬局でも病院でも不足している。インフルエンザ症状のない人は着用不要だ。せきやくしゃみの出る人、手術や点滴作りをする医療従事者など、必要な人に限り有効に使うべきだ。がんセンターには免疫力の落ちた患者が多く感染予防は重要だ。見舞いに来た人も、せきなどが出るならマスクをしてほしい。
 しかし健康な人の場合、マスクを着けて感染を防ぐ効果は、正しい着用法が徹底できれば多少あるかもしれない程度だ。マスクを着けて暑くなり、口や鼻を余分に触れば感染しやすくなる恐れさえある。
 中央病院では5月中はマスク入荷が見込めない。そこで米、英、カナダのいずれも健康な人のマスク着用効果を認めず、マスクの着用を勧めていないことを院内にメールで知らせ、必要な場合に限った使用を呼び掛けた。患者が読める場所に院内掲示も出している。マスクが不足している時期だからこそよく考えてほしい。【聞き手・高木昭午】

上記ニュース中の

厚生労働省は23日、国内の新型インフルエンザ感染の日々の確定者数が20日の77人をピークに減少傾向にあると発表した。厚労省は「感染確定は発症から数日後になるケースもあり、正確に感染の広がりの推移を見るには発症者数の変化を見なければならないが、減少傾向を読み取ることはできる。休校措置の効果が出たのでは」と話している。

は、しっかりしたデータ解析をする前にコメントするべき内容ではない。減少傾向にある、という事実は良いが、その原因を言いたければ根拠を示すべき。手前味噌な解釈に聞こえる。

ついにYahooのトップページにまで「いまさら」なニュースが。

新型インフル マスク過信禁物 症状ない人には予防効果なし

新型インフルエンザの患者が各地で報告される中、(沖縄)県内の薬局・薬店でも全国同様、マスクが売り切れる店舗が続出している。「予防のため」と買っていく客が多いが、県は「症状の出ていない人がマスクを着けても意味がない。感染の疑いがある人に行き渡るようにしてほしい」と冷静な対応を呼び掛けている。
(中略)
 こうした動きに、県福祉保健部の宮里達也保健衛生統括監は「買いだめはやめて」と呼び掛ける。インフルエンザの疑いがある人が病院などに向かう場合、飛沫(ひまつ)感染を防ぐためマスクを着用する必要があるが「症状が出ていない人が予防のために着けるのは意味がない」と説明。「かぜの症状があるなど、マスクが必要な人に行き渡らないのは本末転倒だ」と懸念を示す。
 症状があってもマスクがない場合は、ハンカチを口に当てたり、ペーパータオルを折りたたんで作った簡易マスクでもマスク同様の効果が得られるという。

問題は二つ。

  • 健康な人が予防目的にマスクをすることに何の科学的根拠がない、ということがなぜこれまできちんと報道・説明されてこなかったのか?
  • 「マスク過信禁物」と「症状ない人には予防効果なし」の間のニュアンスおよびロジックのギャップ。「過信禁物」と言われたら普通は、マスクだけでは足らないという読み筋ではないか? マスクの無駄な使用に歯止めをかける意味は伝わらないだろう。本当に必要とする、発症した人と医療者、濃厚な接触で看病する人?にしっかり行き渡らせることを意図するならば、この表現は不味いはず。以前から、アメリカCDCのコメントとしては「マスクをするなとは言わないが、しても、意味があるという根拠はない」という控えめな表現だったが、こういうのはきっと伝わりにくいんだろうね。DoとDo notしか理解できないのかな。

ところで、そろそろマスクに使用を奨めてきた人々・団体をチェックしておいた方がいいかも。どんな目論見だったのかが見えてくるかな。医療用品会社の株を持ってたり広告もらってたりして。
おっとっと、厚労省自ら「少しは効果あるかも」なんて宣っていた。

マスクは予防に役に立つのか 日本と海外では使用法全く違う

(中略)
■むしろ手洗いなどで感染防ぐべきとの指摘も

 海外の人たちがマスクをしないということは、インフルエンザの予防効果がないためなのか。

 厚労省結核感染症では、「していれば大丈夫ということではありませんが、人込みで使用すれば、それなりの予防効果があると考えています。飛まつが付いた手などが口にいかないメリットもあります」と言う。

 一方、インフルに詳しい元北海道小樽市保健所長の外岡立人さんは、こう指摘する。

  「医学的に、マスクをすれば感染しないと裏付ける海外の文献はほとんど聞いたことがありません。WHOのガイドラインにもマスク着用は書いておらず、本当に役立つか何とも言えないということです。欧米では、感染者がほかの人にうつすのを防ぐためにマスクをするので、健康な人はマスクをしないわけです」

 厚労省新型インフルエンザ専門家会議が2008年9月22日に書いたマスク使用のまとめでは、マスクをしても顔とのすき間から空気が入るため感染を完全には防げないとしている。

 海外では、むしろ手洗いなどで感染を防ごうとすると外岡さんは言う。

  「ウイルスは、そんなに空中に飛んでいるものではありません。せきで出た飛まつがドアの取っ手やテーブルなどに着き、そこから感染することの方が多いです。欧米では、接触感染防止を重視しており、手洗いで6割が防げるとされています」

 日本人がマスクをすることについて、外岡さんは、「日本では、公衆衛生の習慣になっているからでしょう。日本独特のもので悪くはありませんが、それで防げると信じるのは危険です。手洗いは十分でないようなので、それを徹底させるべきでしょう」と言う。

これも記事のタイトルが変。日米でマスクの使い方に違いがある、というよりは日本での使い方が、根拠なく、常軌を逸しているということである。