水族生化学特論080708Q&A

  • 微生物由来ではない抗原にはどんなものがあるか?

様々です。たとえば、異種動植物の細胞やタンパク質、糖鎖など。

  • 母体と胎児のRh式血液型不適合による拒絶反応もDanger Modelで説明できるか?

母体の産道や会陰部などが傷ついて出血することが引き金となるようですので、これも組織の障害が伴っている、と見なすことができます。

  • アトピー性皮膚炎はTh2型の体液性免疫の一種であるか?

IgE濃度が高いほど重症化しやすいとのことです。するとIgEへのクラススイッチが関係するということで、Th2型と言えます。

  • Danger Modelは、免疫系の作働原理を説明できる統一された理論となりうるか?

提唱者はもちろんそう思っていますが、多くの人に厳重に検証され、鍛えられてこそ、強い理論になるでしょう。先日参加した日本生体防御学会での講演の中で、Danger Modelに基づく考え方がかなり多くありました。だんだん受け入れられているのでしょう。

ヒアルロン酸の断片は疎水的だからDanger Signalとなる訳ではなく、その断片がパターン認識分子であるToll様受容体によって認識されるからです。

  • Th1/Th2バランスの乱れによってどのようにアレルギーが発症するのか?

詳しいメカニズムにはまだ不明な点がおおいのですが、Th1過剰だと細胞性免疫過剰となり、IV型過敏症が起こりやすくなります。また、Th2過剰だとIgEへのクラススイッチが盛んになり、I型アレルギーが起こりやすくなります。

  • 尿酸は何故Danger signalとして認識されるのか?

近年、尿酸は壊死する(アポトーシスでなく死んでいく)細胞内から放出されることがわかり、これが自然免疫と獲得免疫を活性化することがわかってきました。ただし、どんな分子がその尿酸(通常は結晶)を認識しているのかは不明です。

  • 正常でない細胞死や細胞傷害を引き起こす病原体にはどのようなものがあるか?

ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、その他の毒素など、様々です。

  • 腫瘍ができたときに正常な細胞は障害を受けないのか?

良い質問だと思います。腫瘍がどんどん育って大きくなる頃には、腫瘍は周りの組織を侵して障害を与えているはずでしょうね。おそらく、この段階で、その障害によって免疫系が指導しても遅すぎるのでしょう。

  • naive T細胞からTh1/Th2への分化を担う要因は何か?

マクロファージが産生するIL-12がTh1への分化を誘導します。
Th2への分化は、おそらく他のTh2が産生する、IL-4によって起こります。

  • Th1とTh2の間に構造的な違いはあるか?

表面に発現している分子(表面マーカー)や構造には差がありません。分泌するサイトカインの種類が異なります。