羽田空港ラウンジにてWFCを振り返る

  • 10/23 水生生物のストレスレスポンスに関するセッションに浸っていた。T大学の学生によるワムシの飢餓応答を口頭発表が素晴らしかった。英語の発音もよいし、しゃべるスピードも誠に適切。そして私からのを含めて全ての質問にきちんと答えていた。理学研究院のK先生もとても褒めていた。そのK先生による30分の発表も誠に興味深く、新しい示唆に富んでいた。これにもいくつか質問したが、まだまだし足りないくらいだった。夜はバンケット。雨の中、シャトルバスで大桟橋ホールに移動し、たくさんのスピーチにしびれを切らしながら乾杯の時を待った。圧巻は、北里大のK先生を中心とした先生方によるジャズバンド演奏。とくにK先生は、クラリネット、サックスの名手らしく素晴らしい演奏だった。かっこいいなぁ。もちろん1万円の会費のモトがとれた訳もないが、多くの方々とお話しできて楽しめたから、料理が少々貧弱だったことは気にならない。バンケット終了後、出口で九大の先生方に出くわし、そのまま二次会へ。海洋大のS先生(九大出身とうかがった)も参加。


  • 10/24 朝は、相変わらず閑散としたPlenary Sessionで始まった。水産学会の定期大会ではこのようなPlenary Sessionが無いので、出ないのが標準と勘違いされているのでは無いだろうか。あるいは、水産学会の間口の広さ故に、あまりに自分の専門分野から外れた内容だと聞く気がしないのか。それにしても、ちょっと情けない。多大な努力と出費で選考・招聘したのに、本当にもったいないと思う。11時に、オランダから来たS出版社の女性マネージャーと懇談。30〜40分程度の話しだったが、楽しめた。何か良い本が出せればいいのだが。昼からは雨の中、学生諸君と中華街へ。Nさんおすすめの「謝甜記」で中華かゆを食したらかなり満腹(おいしかった)。もう一軒行こうと思っていた「海南飯店」は次回。これ以上はせいぜい飲茶程度しか入らない、という感じだったので、補体研究仲間のN先生が昨夜教えて下さった「萬珍茶房」に寄った。それから会場に戻り、Closing Ceremonyに出席。Aさんのポスターは残念ながら賞には届かなかった。次回のWFCは4年後にイギリスのエジンバラで。英国水産学会代表の挨拶は、期待どおりの軽いユーモア入りで楽しかった。

WFC2008で改めて感じたが、現在の水産学(水産生物学)関連のバイオテクノロジーで一番のヒットは、やはり海洋大のY先生がリードする研究のような生殖工学分野だと思う。水産関連のゲノム科学・免疫学で、あれほど夢のある、なおかつ現実味を感じさせる研究テーマが走っているか?と、問う声を聞いた。私には自信をもって例を答えることはできなかったが、悲観することはないと思う。夢を語ることは大切だが、そんなに上手に研究の出口を語ることができなくても、ひとつひとつの研究をしっかり重ねて行くことが大事だ。ゲノミクス(ほかのいわゆるオミクス)も免疫も、薄っぺらいことやっててはだめであろう。100年たっても通用する(間違いのない)研究をしよう。補体の分野で例を挙げれば、1960〜80年にかけてのMuller-Eberhardらによる補体タンパクの同定と精製のような。現在と比べて遙かに原始的な機器にしか頼っていないのに、その原理的な正しさと実験の精密さ故にデータが質的な正しさを輝かせている。細々でもそんな研究が死に絶えない日本の科学界であってほしいと願う。