決定版で一段落

「生きるすべ」blogで紹介されていた、Flu騒ぎに関する木村医師の決定版コメントを読んだ。やはりこのような正論がでてくるには時間がかかる。3週間前の血眼状態の日本では言えなかった話しだったろう。ホットな時期のホットなニュースとコメントには耳をかさないのが吉である。
同じサイトに「マスコミ感冒」を批判する記事もある。これも5月21日になってからだ。やむを得ないタイミングだろう。5月8日の段階では同じサイトに「新型インフルエンザは終わらない! 今秋に第2波がやってくる「3つの理由」」などという典型的な煽り記事がのっていた(もちろん上記記事とは著者は別人。それにしてもこの記事中でリスクを説明している「インターリスク総研 主席コンサルタント」氏って感染症の専門家なのかな?)。
木村氏の重要なコメントはここにも抜粋しておきたい。

  • 感染を水際でせき止めることなどできるはずがない。それなのに厚生労働省は、実現不能のことをあたかも実現可能のようにいい続けたのだ。
  • “風邪の流行”の接触調査に関するサーベイランスすること自体無理であり、何の意味もない。それが効果ある政策だと厚労省は主張し、メデイアも感染ルートを報道し続けた。
  • 集会を禁止し、人の動きを止めようとしても無駄であり、感染防止に役立たないことは、スペイン風邪を含め歴史が証明した常識だ。
  • 水際で止めることなどできないのは、最初からわかっていた。流行は避けられない。
  • タミフルは効かないのか?という問に対して)7日間発熱が続くところが6日間で下がることをもって効く、と言えば効く。その程度だ。問題は、タミフルを常用することでウイルスが耐性を持つことだ。耐性新型インフルエンザは、毒性を増す。世界の6割のタミフルを消費、しかも予防的投与をしてしまう日本が、耐性新型インフルエンザの輸出国になる可能性は低くない。これも、感染症対策の途上国であることの証左だ。
  • ①咳を伴う熱があれば職場や学校に行かない、②咳をするときは口を押える、③重症になるまでは医療機関を受診しない、この3点を政府広報でまず徹底させる。その一方で、重症患者を受診するために、あまりに貧弱な診療現場を改善しなければならない。
  • 街の駐車場や公園に、プレハブの診察室を建てればいいのだ。もっとも安全で、安価で、即効性がある。

私が斜体で修飾した最後の2項目が、「ではどうすればよいのか」に明解に答えている。その上で、Flu感染について高リスクな人々が多くいる大規模病院にFlu患者を受け入れさせる愚(犯罪的施策とまで表現されている)を批判している。そのような簡易で安全な診療場所で働き、治療を受ける人にこそ、きちんとしたマスクが十分に供給されて欲しいものである。
技術的には制御が容易なはずの結核エイズをコントロールできていない点で、日本は感染症対策後進国であるという。そうなのだろう。この点を解決するための「ではどうすればよいのか」を調べてみたい。時間ができたら氏の著作を当たってみる。
ところで、タミフルの効果への評価も、これまで私が見聞して「正しいであろう」と思っている情報(下記に一部抜粋)と一致する。

国際医薬品情報誌協会(ISDB)声明
どちらが危険? インフルエンザとタミフル
通常のインフルエンザは自然に治まる軽い感染症であり、普段は健康な人も、もともと病気を持っている人にも、インフルエンザに伴う重篤な合併症の頻度や重症度を低下するという証拠は何もありません。タミフルはせいぜい1日、症状が治まるのが早くなるだけです。これは治療効果としてあまり価値はありません。
タミフルが通常のインフルエンザの流行時に家族の感染を防止するという証拠も何もありません。
これまでのところ、鳥インフルエンザは、ヒトに世界的な流行を起こしてはいません。新型インフルエンザのパンデミックに際して有効であるという証拠は何もありません。

このシリーズの最新記事は「2009A/H1N1インフルウイルスでパンデミックは起きない」であるが、そこでは

今回、[豚][新型]インフルエンザと騒がれた原因となったウイルスは、新型でも豚型でもなく、全く通常の人A/H1N1インフルエンザウイルスであると断定できる。

と言っている。厚労省などの公式見解が今後どうようになるかを注目したい。
が、私としてはもうこの話題はfed upかな。一段落ついた気がする。