C1INHというserpin

先日HAEセミナーに参加したが、HAEはC1INHという補体制御因子の遺伝的(あるいは後天的も)欠損によって起こる重篤な浮腫である。補体がこの病気を起こすのではなく、C1INHの数ある標的の一つであるカリクレインの阻害ができなくなることが主な原因であるそうだ(カリクレインはキニンを放出するプロテアーゼ)。
C1INHはC1rやC1sだけでなく、カリクレインほか様々なセリンプロテアーゼを阻害するSerpinである。(別名serpin G1)いくつかの魚種でもこのserpinのホモログがクローニングされている。魚類C1INHホモログの特長は、N末端にIg-likeドメインが2つ付加されていることである。これらドメインの役割りは不明であるが、ヒトC1INHが、Serpinドメインだけで機能を果たすことから、N末端ドメインには大した役割りは無いのではないかというのが現在の考え方であるようだ。私はあんまり同意しないけど。そもそもこれらがC1INHと呼ぶべきタンパクをコードしているかどうかもまだ確定していない。少なくとも古典経路を介した補体反応を阻害するとか、直接C1sやMASP2の活性を阻害するなどの証拠が欲しいところ。うちのラボにはコイC1INHを研究した経験は全くなく、なんの資源も情報を持たないが、すでに日本人研究者によってコイ血清から、C1INHかどうかはわからないがserpinが精製されている(良く読むと、ここで精製された血清Trypsin inhibitorがserpinである証拠が弱いが、、、)。これをとっかかりにC1INHの機能研究ができるかな?まずは、このserpinが、ゼブラフィッシュやニジマスでC1INHとしてクローニングされた分子のorthologueであるかどうかが問題。やっぱりコイからクローニングしないとだめか? ニジマスなどのC1INH推定アミノ酸配列から推定した分子量が67 kDa。コイ血清serpinの分子量が62 kDa (on SDS-PAGE)。うーん、微妙… ニジマスのC1INHにそっくりなゼブラフィッシュC1INHがデータベースにあって、これにそっくりなコイEST配列も見つかったが、C1INHと呼ぶには短すぎてわからない。上記血清serpin (serpin62)とのidentityも不明である。anti-carp serpin62抗体を分与してもらえるかなぁ。
なんでこんなことを考えているかというと、魚類で古典経路特異的に補体反応を阻害できると生体防御上なにかいいことあるかも、と思ったからだ。あ、すでにあるanti-C1q-Aでもいいのかな。