進化学者Susumu Ohnoのお言葉

「免疫における認識」(蛋白質核酸酵素 31巻9号749-755ページ)より引用。

緒言
……脊椎動物の免疫機構が、感染防御に一応成功しているのは機構自身が完璧であるからではなく、その対象である病原細菌、ウイルスが自己虐待を好むマゾヒストであるからだということになる。
 それではなぜ病原菌、ウイルスは自ら好んで宿主の免疫機構に虐待されるのであろうか。

I.寄生生物の宿命
 寄生生物というと、一見利己主義な軽蔑すべき特殊な生物のように思われているが、広い目で見ると、光合成のできる植物を除いて、この地球上の全多細胞生物は植物に寄生していることになる。…
 それでは寄生生物の宿命はなんであろうか。自然淘汰によって生存する適者が最高能率の個体ではなくて、不能の個体であるということである。草食獣の場合を考えてみよう。…
 われわれ人類の頭脳についても同じことがいえると思う。もし、人類の頭脳が明晰であれば…
 …科学者についても、同じことがいえよう。もし科学者の頭脳が本当に明晰であれば、問題を次つぎに解明し、必要な科学者の数は急減しているはずである。幸いわれわれの頭は自然淘汰によって、問題の解決はできないようになっているが、新しい問題は見つけられるように調節されている。したがって、科学者の総数は毎年漸増し、学会の数はますます増えるようになっている。誠にありがたいことである。
 さて、脊椎動物に寄生する…

ま、最後の段落がおもしろかったので… もちろんこれは話の枕で、これ以降は極めて尋常なそして示唆に富む、抗原提示と免疫応答の解説がつづく。