Zymosan

酵母細胞壁成分であるという粒子。こちらに書いてあるほど単純な組成ではないはず。顕微鏡で見れば「酵母の破片かその凝集物」に見えるだけ。これは補体の研究には便利な活性化物質としてよく使われる。Sさんのティラピアを使った研究でこれがもっと大量に必要になる予感がしたが、Sigmaで売ってるZymosan Aなる世界標準品はけっこう高い(14200円/1 g)。ということで、パン酵母から自作することに。作り方は難しくはない。補体研究の巨匠 Peter Lachmanによる実験テキストブック(Complement Technology, Handbook of Experimental Immunology 4th ed., Vol 1 "Immunochemistry" Chapter 39., Blackwell, 1986)に記載されている。(そのハンドブック中でも、Zymosan has now become prohibitabIy expensive and good results can be obtained with a preparation made from ordinary bakers's yeast. とある。)
実際には、ドライイーストをオートクレーブし、菌体をPBSでよく洗ってから、2-MEとヨードアセトアミドで順次還元・アルキル化、さらによく洗って出来上がり。
Sさんはちょっと苦戦したが、これも生化学的な実験のよいトレーニングになったはず。それにしてもドライイースト50 gをオートクレーブすると臭いがキツイわぁ。きれいな標品になったか、これからチェックしてもらおう。もうタンパク質の溶出がほとんどないと良いのだが。あと、zymosanと等価な濃度の定義をどうしよう。酵母粒子のカウントでいいかな。
自分でもよく使う割にはzymosanがどんな物質なのかよく知らない(オハズカシイ)。ただし、調べてもそう簡単にはしっかりした答えは見つからない。こちら(pdfへのリンク)の総説が私には参考になっている。

(1→3)-β-グルカン以外にもマンナン、タンパク質、或いは脂質なども含んでいる