宋メール

NHKの「サラリーマン・ネオ」が好きなのだが、数年前にその時間帯(割と深夜)にTVをつけたら、「カンゴロンゴ」なる、これまた変な番組をやっていた。おもしろいのか教条めいてうっとうしいのか図りかねながらも見ていたが、その出演者の一人に”宋文洲”という方がいた。どんなきっかけだったかもう忘れたが、その宋文洲さんのメールマガジンを読んでいる。宋文洲さんのエッセイ「論長論短」の他に、宋文洲さんと近しい日本人実業家?のエッセイも掲載されている。私は、その日本人の話しにはあまり賛成しないが、宋文洲さん自身のエッセイには頷くことが多い。
最近の「論長論短」から拾ってみると…

論長論短 No.111
       立派な企業理念は怪しい
                   宋 文洲
消費者や投資家を裏切った会社の多くには立派な企業理念があります。玄関、
会議室、名刺の裏などに立派な理念を掲げながらコンプライアンスすら守らな
い、そんな企業の内部を多く見て来た私なので、立派な企業理念を無意識に警
戒してしまいます。

理念は要らないと言っておりません。数百年もやってきた老舗企業でも企業理
念はいたってシンプルです。「誠実」とか「勤勉」とか、小学生も簡単に言え
る基本中の基本の倫理観ですが、世間にアピールすることもなく、経営者と社
員が地味な行動をもって体現しているのです。

テレビのコマーシャルを見てください。あの英語で喋る立派な台詞は余計だと
思いませんか。破産したり、コンプライアンスに違反したりするとそれらの綺
麗ごとは全部嘘を裏付ける証拠に変わるのです。

社員の責任ではありません。社員はそんな立派なことを考えて仕事している訳
ではありません。無駄な残業をせず、幹部が患部にならず、世間並みの給与を
もらえばそれで満足するのです。贅沢をいえば生き甲斐を感じ、自己実現でき
る仕事をさせてもらいたいところです。

いわゆる「立派な企業理念」の多くは一部経営者の思い付きと好みに過ぎない
からです。私の観察では特に老害の居る会社は立派な理念を作りたがるのです。
その立派な理念に伴い、政治家のような立派なことも言い始めるのです。

「雇用を確保するのは経営者の使命」とか、「ニッポンの○○産業を××する」
とか、そんな立派なことをいう経営者に限って株主総会も取締役会も眼中なく、
自分の立派な理念、立派な話に夢中なのです。
(後略)

大上段からいろんな「正しいこと」「立派なこと」を振りかぶられて、なんとなく違和感を感じながらもそれをうまく説明できないもどかしさをここ10数年間感じ続けている私は、こんなスパリと簡単に言い切ることができることに、大きな憧れ・嫉妬・尊敬を感じてしまう。(ただし、上記の宋さんの言葉ではではないが、正しいことや立派なことはしなくてよい、と私が思っているわけではない。)
かっこよさそうな言葉を吐けば吐くほど、相対的にその言葉が軽くなる(言葉の比重/密度とでも表現できるかもしれない)と特に最近思う。(相対的に実行・達成できている内容が改善されていないからかもしれない。)
魅力的に響く言葉を駆使できなければ、なかなか認められにくい世の中であるが、やはり本質は何かが大事でしょう。言葉が拙い者の開き直りなのかもしれないが。

宋メールのバックナンバーはこちら